今月10日に息を引き取られたそうです。
享年92歳であったと聞きました。
訃報を知った記事はこちら⇒http://cedarben.blog.so-net.ne.jp/2017-11-18
私にとって中尾 豊さんはTMSを通じて様々な情報やテクニックを教わった大先輩であり、特に地面系モデリングでは貴重なアドバイスや方向性を教えて頂いた師匠でもありましたので、この訃報にはショックを隠せません。
私のバイブル |
私にとって中尾豊さんと言えば、まずはこの書籍をはじめとした、模型化設計図の数々でありました。
中尾さんの図面は、単なる実物を1:80にした図面ではありません。
中尾さんなりの解釈によって作られた「模型化設計図」です。
つまり、実物の図面を根拠としながらも、実車や写真から模型的に美しいバランスになるように書かれたもので、実車の設計図ではありませんでした。
実車の図面から寸法をどのように読み取り図面化するかについての苦労話も伺ったことがあります。
例えば電車でいえば、HゴムのRや大きさは実車図面ではHゴムを入れる前のカット寸法しかありません。それを図面化するときどの寸法を取るかは中尾さんのセンスで書かれていました。ウインドウシルの位置関係なども同様にどこで寸法を取るかは実車図面だけでは特定ができません。
そのような部分の表現にも中尾さん流の考え方やセンスが反映していたわけです。
この記事でもお世話になりました |
こちらは私にとってはエポックとなった1981年のTMSコンペで特選を受賞した作品の記事です。
この時、文章の校正はもちろん、記事の図面も中尾さんが書いてくださり、出版後の原図返却時に図面の知識の無い私にコメントを頂いたのが実は初めて中尾さんとの接点の始まりでありました。
しかし、その時はあくまでも手紙上のやり取りだけで、ご本人に直接お会いすることはありませんでした。
後に伺ったお話で、この時のコンペで中尾さんが拙作をすごく推していただいたことを聞き、感動しました。
そして、記事も本来なら中尾さんは編集部内で西日本のモデラーの記事しか担当しないのが原則だった中、あえて拙作の記事の担当をして頂いたことなどもビックリでした。
中尾さんから頂いた本 |
こちらは中尾さんから頂戴したTMS引退後のホビーライフとTMS時代の思い出をまとめた本です。
中尾さん作品展からお付き合いが始まった・・ |
その本の中で紹介されている、中尾さんの地元の模型店「まるしん」で開催された作品展の模様です。
中尾さんの作品が一堂に見れるうえに、一度見たかった機関庫の入換レイアウトも見れるとのことで、こちらには私もお邪魔しました。
当日は残念ながら中尾さんはご在席ではなく、芳名帳に記入をしただけだったのですが、丁重なお礼状をいただき、さらに娘さんが住まわれていたのが偶然私の家のすぐ近くであったことから、中尾さんが娘さんのお宅に上京の折に、空き時間でお会いする機会ができたことからお付き合いが始まりました。
1990年のことでした。
そのような縁でその後何度かお話を伺うことができるようになったのですが、そこで伺ったお話、アドバイスは私にとってはまさに財産のような内容がいっぱいでした。
その内容はまたどこかの機会で書いてみたいと思います。
その後はご自宅を阪神大震災で被災された後の顛末のお話や、Gゲージを楽しまれるようになったお話などを伺いましたが、数年前から年賀状が届かなくなって気になっておりました。
私なりの思い出を記し、心よりご冥福をお祈りしたいと思います。
ありがとうございました、中尾さん。
19 件のコメント:
私も「まるしん」でお会いしてお話を伺ったのが最初でした。TMSで有名な方にお会いできるチャンスなので、わざわざ宝塚まで遠征した覚えがあります。高校の時「たのしい鉄道模型」のEF57の記事をバイブルに初めて真鍮工作したのも良き思い出です。その時買った糸鋸は今でも現役です。本当に素晴らしい功績を残した方ですね。ご冥福をお祈りいたします。
通りすがりの64さん
やはりまるしん模型、行かれたのですね。
中尾さんが切り開いた模型の世界はいっぱいありますね。
TMSでの記事紹介の仕方でも、従来の型を破る手法を内部を説得しながら切り開いてきていることが多いですね。
合掌。
TMS誌上では名前を「なかお・ゆたか」と平仮名書きにしていたのが、当時としては斬新というか、珍しかったです。最後は山崎氏から避けられたようで、それも非凡な才能なるが故なのでしょう。
モハメイドペーパーさん
模型誌で作者の顔を出したのも中尾さんの発案だったそうです。
内部を説得するのは大変だったようで、ことほど左様に色々な点で山崎さんとは合わない部分があったようですね。
みなさん、いろいろな意味で影響を受けてるんですね。
その頃のTMSは、スタッフにも投稿者にも後輩の目標になる方がたくさんいましたね。
最近の情報誌化した模型誌とずいぶん違う・・・・(意見には個人差があります)
Cedarさん
ある年代より上の人は多かれ少なかれどこかでお世話になっているのではないかと思います。
当時の記事はやはり影響力ありましたね。
時代がそういう時代だったのかもしれません。
中尾さんの文章は当時中学生の私でもわかりやすく、ところどころに工作のヒントがちりばめられていました。TMS1973年3月4月号の今はなき大田区P社の客車バラキットの組み立て記事や翌1974から連載されたA社のバラキットの組み立ては現在のようにパーツの種類がない時代に創意工夫がされていて現在読んでも参考になります。そういえば今では完成品蒸機にあたりまえのように付いている空気作用管の完成品への取付を紹介されたのも中尾さんだったと記憶しています。リン青銅線もあまり市販されておらず、銅色はハンブロールの銅色で表現されていました。(間違っていたごめんなさい)当時、私も真似しましたが黒い蒸機に銅色が映えるのだと感心しました。ご冥福をお祈りします。
toboさん
客車キットの記事は私の工作方法のお手本でした。床下に台枠表現をした作品はここからスタートだったと思います。
蒸気機関車の記事も新鮮でした。
chitetsuさま
記事を拝読いたしまして、故人のとても暖かい性格といいますかジーンと来ちゃいました。
写真の世界にも若干名優しい巨匠がいらっしゃいますが、模型の方が人徳が高い方が多いように思います。
話変わりまして銀座線の記事に付きまして、電関人も85年の社会人の仲間入りしたときは会社が三越前で、
散々銀座線のお世話になりましたので、このクルマには一方ならぬ思い入れがございます。
久々にシコシコはじめたNキット製作でまだまだ第一弾の完成には時間が掛かりますが次なるモジュールチャレンジは、
銀座線のこの車辺りにしようかと思いました。
私の様な年代でも、なかおさんのお名前は子供の頃から良く拝見しておりました。
今でも、機関区のセクションは憧れで...1/80で情景を作る機会があれば、参考にしたいと思っています。
人生を通して好きな模型と関わられたことに憧れます。ご冥福を。
狂電関人さん
中尾さんはいつも終始笑顔でゆっくりと語る口調で、表現も分かりやすかったですね。
尊敬する方でした。
銀座線、会社に入った頃は仕事で良く利用していました。
是非チャレンジしてみてください!
卓さん
中尾さんの記事や図面は特集号などにも掲載されていましたので、比較的若いかたも馴染みのあるお名前と思います。
機関区のセクション記事は穴が空くほど読みました。
中尾さんの図面は、影ができる線は太く、そうでない線は細く、という微細な変化を付けられていたので、非常にイメージしやすく、模型化の意欲がわくものでしたね。
図面と絵画の合いの子と言うか、絶妙な独自の作図スタイルで、私はTMSに原稿を入れる時のイラストは、稚拙ながらもこの「中尾スタイル」を取り入れて描いていました。
模型の作風もそうですが、わかりやすい表現の記事、図面、イラストと、全てにわたり影響を受けた方です。
赤影さん
中尾さんの図面の描写はご自身が模型にしたらどう見えるかという目線で描かれていましたね。ご自身が美術系の学校のご出身であったことも影響しているのでしょう。
精細だけど突き放すような図面が多い中、全ての線に思いが込められたような描写だったと思います。
その基盤には中尾さん流の分かりやすさを大事にするスタンスがあったような気がしてなりません。
この時代の銀座線旧型車の色って、中部のインタアーバンの車体色(トラクションオレンジ)に一番近いんです。屋根の赤も同じく(インディアンレッドっていう色!)、調色塗料ないですかね〜〜ってまたまた本題外しですみません。
銀座線旧型車の記事のコメント、間違ってこちらに上げちゃいました。インタアーバンの教祖中尾さんのお導きかな?
Cedarさん
このカラーリングの話伺って、なるほど!と思いました。
きっと中尾さんの導きでこちらに来たのでしょうね。
はじめまして。
TMS1月号を読んで中尾豊さんの訃報に接し、ネットを検索して、貴殿のブログを拝見させていただきました。
私が初めて手にしたTMSは280号からで、山崎主筆をはじめとする中尾さん、赤井さんの記事を読んで育てていただいたモデラーです。
プレス・アイゼンバーン社から、「造形 私のアルバム」が発売された時は、ちょっと意外な感じがしたのですが、大切な蔵書になっています。
中尾豊さんという巨星が墜ちたことは、大変寂しく残念に思います。
心からご冥福をお祈りいたします。
わたらせモデラーさん
中尾さんの図面や記事は非常に参考になり、私も中尾さんの著作で育った立場として寂しく思います。
中尾さんは鉄道以外にも造詣が深く、温かいお人柄でした。
コメントありがとうございました。
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